平成24年 第1回龍馬塾「坂本龍馬と北添佶磨」報告
3月15日(木)午後6時~7時30分、北海道坂本龍馬記念館ホールにて、平成24年第1回龍馬塾「坂本龍馬と北添佶磨」が開催されました。龍馬塾は北海道坂本龍馬記念館の社会教育・人材育成事業の柱となるもので、日本の伝統文化や武道、坂本龍馬の生き方や龍馬に関連のある北海道の歴史などを学び、文武両道にたけた人材の育成、青少年の心の育成を目的として開催しています。先行き不透明な現代社会だからこそ、龍馬をはじめとする先人の知恵や実行力が、私たちに為すべきこと、どう生きるかを示してくれます。
まず、講師を担当された須藤隆仙氏をご紹介します。須藤氏は南北海道史研究の権威として広く知られており、土方歳三供養碑の寺として有名な浄土宗称名寺ご住職のほか、函館市文化財保護審議委員、南北海道史研究会会長なども務めておられます。函館市文化賞、北海道文化奨励賞受賞を受賞され、『北海道の伝説』、『函館の歴史』、『箱館開港物語』、『函館道南大事典』、『函館市史』、『幕末維新戊辰戦争事典』、『新選組大事典』など、多数の著書があります。
今回の龍馬塾には経営者や学生、主婦、正会員など16名の受講者と2名の取材記者の方々が参加、龍馬の蝦夷地開拓計画に多大な影響を与えたといわれている北添佶磨(きたぞえ・きつま)の足跡を中心に、当時の時代背景や箱館の歴史などを織り交ぜながら進められました。
幕末期、蝦夷地には海獣の毛皮獲得を主たる目的にロシアが侵入しており、蝦夷地の防衛は急務でした。そんな中、当時の箱館には徳川幕府のみならず全国諸藩から様々な人々が訪れており、北添もそのうちの一人で、文久3年(1863)5月に蝦夷地視察のため同志と共に箱館を訪れ、後に江戸で勝海舟に蝦夷地の様子を伝えたことが龍馬の蝦夷地開拓計画につながったといわれています。
しかし、残念ながら北添は池田屋事件で死亡、龍馬の第一次蝦夷地開拓計画も中止に追い込まれてしまいます。ちなみに、北添は蝦夷地視察に際して3人の親友を誘い、同行したといわれており、そのうちの一人、小松小太郎は箱館への渡航中に病気になり、看護の甲斐なく箱館上陸後に亡くなり、遺体は函館山麓(現在の住吉町共同墓地内)に埋葬されたといわれています。
発病当時、北添らは小松に下船するよう説得しましたが、小松は「死んでも北海の守護神になる」と聞き入れなかったそうです。当時、蝦夷地に渡るということは命懸けの行動でした。
上記内容のほか、○ペリー艦隊上陸時に亡くなった外国人兵士2名の墓がもとになり、現在の外国人墓地ができたこと、○当時の函館山(当時は薬師山と呼ばれていた)の状況などが紹介されました。
後半は質疑応答の時間が設けられ、幕末の箱館に関する質問なども出されました。Q.須藤氏がご住職を務める称名寺について⇒A.箱館戦争時、新選組の屯所として使用されていたこと、Q.幕末の蝦夷地視察の状況⇒A.北添の他にも松浦武四郎やペリー、そして維新後は開拓使在勤中の榎本武揚なども積極的に調査にあたったこと、Q.箱館戦争で旧幕府軍を率いた榎本武揚が龍馬と同じように蝦夷地を新天地として考えた根拠⇒A.勝海舟を通じて榎本と龍馬双方に話が伝わっていた可能性があること、Q.侠客の柳川熊吉について⇒A.箱館戦争終了後、敗北して賊軍とされた旧幕府軍の遺体が埋葬されずに放置される惨状に堪えられず、大岡助右衛門(後に札幌の豊平館を建設した人物)らと共に遺体を回収・埋葬して回りました。これは静岡における清水次郎長と同じで、当時の侠客にはなかなかの人物が多かったことなど、興味深い様々な内容が紹介されて終了となりました。
須藤氏によると、ペリー来航以後、戊辰戦争最後の戦いである箱館戦争の舞台となった函館には、未だ知られていない幕末の史実がまだまだ埋もれているだろうということでした。
龍馬塾は、龍馬の誕生日・命日、そして龍馬像建立記念日である11月15日にちなみ、今後毎月15日に開催されます。4月~6月の開催内容につきましては、下記の通りとなっております。定員となり次第締め切りとなりますので、お申込みはお早めにどうそ。
4月は、亀山社中、海援隊といった日本初となる商社を設立し、それをもとに近代日本の基礎を築いた龍馬の経営術について私がお話させていただきます。特にビジネスマンや経営者の方にとっては、龍馬の多彩なアイデアや行動力の中にヒントが見出せることと思います。
■「龍馬塾」今後の開催日程及び内容(複数受講可)
○4/15(日) 午後6時30分~8時
第2回龍馬塾「坂本龍馬の経営術」 講師:三輪貞治(北海道坂本龍馬記念館館長)
幕末の動乱の中で日本初の商社をつくり、外国との貿易を行った龍馬の先見性や経営術を講演致します。
○5/15(火) 午後6時30分~8時
第3回「詩吟入門」 講師:湊賢心(水月流賢心朗吟会会長・宗家)
詩吟は幕末の私塾等での漢詩の素読がルーツで、幕末の志士達も熱い想いを表現するために好んで詩を吟じました。
○6/15(金) 午後6時30分~8時
第4回龍馬塾「幕末の蝦夷地と北方領土」 講師:加藤潔(前函館市立青柳小学校校長)
江戸時代から続く北方領土問題や、龍馬が目指した蝦夷地(北海道)の古今をわかりやすく解説します。
●対 象:どなたでも受講できます(要予約)
●定 員:15名(定員になり次第締切り)
●協力金:500円(1回につき/資料代含む/正会員無料)
●会 場:北海道坂本龍馬記念館ホール(十字街電停前)
●申込み:北海道坂本龍馬記念館
☎ 0138-24-1115 / FAX 0138-24-1116
E-mail:ryoma1115@amail.plala.or.jp